このページでは分散投資の効果について解説します。
すべての投資家はできるだけリスクを回避したいと思っているでしょう。
分散投資は「無料の報酬」を投資家に与えてくれます。
国際分散投資は金融の世界では珍しく、「ただ飯」に近いものを提供してくれるのである。
引用:ウォール街のランダム・ウォーカー【第10版】
投資のリスクを下げながら、より高いリターンを得られたら最高です。
分散投資はリターンを維持したまま、リスクだけを下げる効果があるのです。
分散投資から「ただ飯」をもらっていない投資家は損をしています。
【分散投資とは?】わかりやすく解説
投資の名著「ウォール街のランダム・ウォーカー」から引用しながら、分散投資の効果をわかりやすく解説していきます。
以下引用を含む
【2つしか会社がない島の話】
2つしか会社がない島を想像してください。
- リゾート会社(ビーチ、ゴルフコース経営)
- 傘メーカー会社
島には上記2つの会社しかありません。
そして、両社とも業績は天候に左右されます。
晴れの日はリゾートが繁盛し、傘の売り上げは落ち込みます。
反対に雨の日はリゾートが落ち込み、傘の売り上げが上がります。
下表は天候別に両社の株式投資のリターンを仮定したものです。
傘メーカー | リゾート会社 | |
雨の日 | 50% | -25% |
晴れの日 | -25% | 50% |
平均して1年の半分は晴れて、もう半分は雨が降るとします(晴れと雨の確率は2分の1)
傘メーカーの株式を買った投資家は、1年の半分(雨の日)は投資額の50%の利益を上げ、残る半分(晴れの日)は25%の損をします。
しかし、現実の世界において、1年の半分が晴れて、もう半分が雨なんてことはありえません。
「ある年は晴れの日が多い」「ある年は雨の日が多い」というように、1年間の天候にはバラつきがあるはずです。
晴れの多い年に傘メーカー会社に投資していたらリターンは低くなります(リゾート会社への投資はリターンが高くなる)
雨の多い年に傘メーカー会社に投資していたらリターンは大きくなります(リゾート会社への投資はリターンが低くなる)
つまり、どちらの会社への投資もリスクがあるということです。
ここで登場するのが分散投資です。
投資家がひとつの会社だけに投資するのではなく、持っている2万円を分けて、1万円をリゾート会社、1万円を傘メーカーに投資したとします。
晴れの日はリゾート会社が50%の利益を上げ、傘メーカーは25%の損をする。
雨の日は傘メーカー会社が50%の利益を上げ、リゾート会社が25%の損をする。
リゾート会社と傘メーカー会社に分散投資することで、晴れの日でも雨の日でも、25%の利益(50%-25%)を上げることができるのです。
リゾート会社と傘メーカー会社に分散投資することで、リスクを下げながら安定的なリターンを得られるのは魔法のような効果です。
以上が分散投資の効果の解説。
上記の簡単な例は分散投資の基本的なメリットを説明しています。
分散投資の効果をわかりやすく解説するために極端な例を取り上げています。
現実世界で考えたとき、天候によって会社の利益が決まるというのは馬鹿げているので、あくまで参考程度にご覧ください。
ただ、分散投資の仕組みはこんな感じなのです。
そして、分散投資の効果(リターンをできるだけ維持したまま、リスクだけを下げる)は決して嘘ではありません。
分散投資の効果が発揮される条件
分散投資の効果が発揮される条件として、「資産ごとの相関(相関係数)」が挙げられます。
さきほどのリゾート会社と傘メーカーの例でいうと、分散投資の効果が発揮される条件は以下のとおりです。
- 晴れの日はリゾート会社がプラスで傘メーカーがマイナス
- 雨の日はリゾート会社がマイナスで傘メーカーがプラス
つまり、両社は天候によって全く反対に動くのです。
この両社の関係を「完全に負の相関(相関係数がマイナス1)」と言います。
投資において、株式①が悪いときに株式②が良くなる関係は、お互いが助け合ってリスクを減らすことができるのです。
しかし、現実世界では例で挙げたリゾート会社と傘メーカー会社のように、きれいな形ですべてのリスクを除くことは不可能に近いです。
なぜなら、完全に反対の値動きをする「株式①と株式②」なんてこの世にないから。
では、分散投資に意味がないのかというとそうではありません
株式①と株式②が同じように動くとしても、全く同じ動きでないかぎり、分散投資の効果は発揮されるのです。
国際分散投資の効果は素晴らしい
今では投資信託やETFを使えば、誰でも簡単に国際分散投資ができる時代になりましたが、国際分散投資は素晴らしい効果を与えてくれます。
下図は国際分散投資の効果を示したものです。
引用:ウォール街のランダム・ウォーカー【第10版】
上図を見ると、実線と点線の2つあります。
実線はアメリカ株式だけに投資した場合です。
実線は銘柄数(横軸)が増えるほど、リスク(縦軸)は低下していることがわかります。
点線は先進国、ヨーロッパ、太平洋諸国、中近東国、新興国など国際分散投資した場合です。
点線も銘柄数が増えるほど、リスクは低下しています。
国際分散投資の素晴らしい効果は、アメリカ株式だけに投資した場合(実線)よりも、国際分散投資した場合(点線)のほうがリスクが小さくなっていることです。
図ではアメリカだけの投資と比べて、国際分散投資ではリスクが10%ほど下がっています。
つまり、1つの国だけに投資するのではなく、先進国、ヨーロッパ、新興国など国際分散投資をするほうがリスク低下の効果が期待できるのです。
なぜ国際分散投資でリスク低下の効果が期待できるのか?
国際分散投資が効果を発揮する理由は、諸外国(特に新興国)の経済はアメリカと同じ方向に動かないからです。
例えば、石油の値上がりは、アメリカを含む先進国に打撃を与えましたが、インドネシアや中近東の産油国の経済にはプラス要因となりました。
同様に、鉱物など天然資源の値上がりは資源を持たない先進国に打撃を与えますが、オーストラリアやブラジルといった資源国にはプラスとなります。
上記のように、すべての国がアメリカ経済と同じように動くわけではないので、国際分散投資によって素晴らしい効果が期待できるのです。
国際分散投資の効果が弱くなる要因
国際分散投資の効果が弱くなる要因は2つあります。
- グローバル化の進展
- 分散投資の限界
分散投資が投資家の思うままに「無料の報酬」を与えてくれるわけではないのです。
以下より解説します。
グローバル化の進展
国際分散投資の効果が弱くなってきたと指摘するプロ投資家はいます。
なぜかというと、グローバル化の進展によって、アメリカと諸外国の株式市場の相関係数が高まっているからです。
グローバル化の進展によって、アメリカと新興国の経済は同じ動きをするようになっています。
新興国だけでなく、世界各国がアメリカの経済に大きな影響を受けているのです。
しかし、私は以下の言葉を信じて国際分散投資を続けます。
完全に同じ動きでないかぎり、国際分散投資に意味はあるはずです。
市場間の相関係数が高まってといっても、依然として完全相関状態とはほど遠く、幅広い分散投資によってポートフォリオ全体のボラティリティを低下させる余地は残っている。
引用:ウォール街のランダム・ウォーカー【第10版】
分散投資の限界
国際分散投資の効果には限界があり、銘柄数をとにかく増やせば良いというわけではないのです。
さきほどの図をみるとわかりますが、銘柄数を50以上に増やしても縦軸のリスクはまったく変化していません。
つまり、分散投資は一定のレベルまで分散すると、それ以降は分散を増やしても、実質的なリスク低下の効果は期待できないのです。
なぜかというと、リーマンショックのような世界レベルの株価暴落は、分散投資でも防ぐことができないからです。
株式市場には「世界的不況」「株価下落」という市場リスクが必ず存在して、市場リスクは投資をしているかぎり回避できません。
まとめ
分散投資をすればリスクを下げることができるので、投資家は幅広い金融商品を保有するべきです。
グローバル化によって株式の相関係数が高まっているとしても分散投資にはメリットがあります。
しかし、分散投資にはデメリットもあるので注意してください。
「とにかく分散すればいいんでしょ!」と片づけるのではなく、メリット・デメリットをしっかりと把握して実践しましょう。
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